ウナギの資源を守る

pic_08養殖といってもウナギの場合、天然のシラスウナギを捕獲し、それを池にいれて育てている。つまり、資源は100%天然に頼っている。

そのシラスウナギが4年連続の不漁となり、環境省のレッドリスト(絶滅危惧種1B類)に指定され、国際自然保護連合が絶滅危惧種への指定を検討・継続審議がなされるなど、ウナギ資源の枯渇が危惧されていることについては、たびたび報告してきた。

12月、台湾でのシラスウナギ漁が始まり、豊漁のニュースが流れた。が、日本ではさほどの数字は出ておらず、今のところ5年目のシラスウナギ漁についてはこれから、といったところだ。
(2013年12月11日現在)

また、異種ウナギ(特に熱帯のビーカラ)についても資源管理がなされないまま利用が進んでおり、研究者は警笛をならしている。
いずれにしても今後も、ニホンウナギおよび異種ウナギについての資源の保護・管理については業界一丸となって取り組んでゆかなければならない、大きな大きな課題であることに変わりはない。

 

今年最初の本号(2014年正月号)では、ウナギ資源管理・保護のイニシアチブをとる、
水産庁の香川殖推進課長にうかがった。(取材日/2013年12月11日)

―(編集部) まず、異種ウナギの取り扱いについて、水産庁のスタンスをお聞かせください。

香川部長(以下香川) 日本人はもともと、ニホンウナギを食べてきました。現在、今ある天然ウナギ資源を捕りすぎないよう管理が必要であり、また天然資源に依存しない資源レベルが低いので人工種苗生産技術を開発中、という状況にあります。
こういう状況でもウナギを食べたいから、いろんなウナギ(異種ウナギ)に手を出し、食いつぶしてゆく・・・・・・ということになってしまったら、日本人は責任を問われるでしょう。そういう行為に積極的に賛成することはできません。
水産庁では、各地の養殖業者の方に集まっていただき、頻繁に協議会を開いています。ニホンウナギにとどまらず全てのウナギの天然資源を守る、という考えは業界にかなり浸透してきたと思います。

―人工種苗の開発、いわゆる完全養殖についての進捗状況は?

香川 進んでいます。お金をかければ量産できるところまで出来ています。シラスウナギの不漁でウナギの価格が高騰しましたが、それと比較してもまだ高い。
人件費と餌がコストの大部分ですが、それをなんとか解消し、将来的には人工種苗を主体に使ってゆけたらと思います。が、安いコストで大量生産できるようになった場合、価格の問題が生じてきます。
高くても、安くなりすぎてもいけない。天然資源で不足している分を、人工種苗が補うなどのバランスを取りながら、価格の安定をはかることが大切です。

―ウナギ資源管理、人工種苗の開発を続けてゆく中で、来年の活動方針を教えてください。

香川 シラスウナギの採捕・親ウナギ漁業・ウナギ養殖業に係る資源管理を三位一体として着実に進めること、が基本です。シラスウナギの漁業者に対して、採捕数量や出荷先ごとの出荷数量の報告を義務付けることなどを9月・10月に通知しました。また、ウナギ養殖業者の皆様にも、池入れ数量などについての報告をお願いしています。
さて、来年となると、まずは適切なウナギ資源管理について国際的な合意を得ることを目標にしています。

―ニホンウナギのシラスが接岸する近隣国、中国、台湾、韓国、フィリピンそして日本ですね。

香川 「ウナギの国際的資源保護・管理に係る非公式協議」を既に4回開催しています。来年5回目の協議は日本で開催予定です。なるべく早く合意形成し、次はそれを日本でも守ってゆく・・・・・・ということです。